パリ♡グラフィック ロートレックとアートになった版画・ポスター展【1/8迄】

日に日に寒くなりますね、月のはじめに美術館にいくつか行ってきたのでご紹介。

今年入ってからなんだか忙しくて更新全然できてない美術展リストがどんどんたまってるので今のうちに更新しなくちゃ……

 

パリ♡グラフィック ロートレックとアートになった版画・ポスター展 @三菱一号館美術館 ~1/8

 

まず第一室に入るとサティの曲が流れてて驚きます。美術展で映像作品としてではなく、BGMとして音楽が流れてるのって現代アート以外だと初めてかも。

三菱一号館美術館のコレクションからかなり作品が出てるのですが、むしろポスターの分野に造詣の深い館だからこそできる演出だなぁと。ポスターに音楽に、一気に19世紀末のパリにタイムスリップした気分になれます。

 

さて、そもそものタイトルにも出てるように、ロートレックの作品の量が半端じゃないです。ロートレック印象派の画家とも交流があるので、印象派の画家を題材にした映画や漫画などでも描かれていて、もしかしたら印象派といっしょくたで覚えてる人のほうが多いかもしれません。

ちょうど美術館を訪れる前に見た映画「ゴッホ 最後の手紙」でもロートレックの姿は描かれていました。

ロートレックは子供のころに足を怪我してから下肢の成長が止まり、それで画家の道を志すことになるので、画家の集まるシーンでも割と見分けが付きやすいです。

 

そんなロートレックの描くポスターですが、遠目で見たときにぐっと目を引く構図や色使いはさすがだなと思いますが、近寄ってまじまじ見ると特に男性の顔のデフォルメが酷く醜くされていて、なんだかなぁと感じました。妙に顔がつぶれていたり、カエルのように口が大きかったり、鷲鼻が強調されていたり……

多分、これは個人的な推察ですが、身体的な障害に関して色々と差別されてたであろうロートレックはあんまり貴族であろうとブルジョワジーであろうと、キャバレーで遊んでいるような男性は好きじゃなかったのかも知れません。身なりの綺麗な女性も、結構な割合でお世辞にも「美しい」とは言えない感じにデフォルメされているので、そういう階層自体をそもそも憎んでいたのでしょう。

その代わりのように、娼婦やダンサーといった女性の絵は躍動感があり、生き生きしていて、ふわりと広がったスカートが軽やかです。

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↑撮影可能ゾーンもあり 当時のパリの写真の壁の上に飾られたポスターのある空間は19世紀末に迷い込んだかのよう

 

今回の展示で見直したのはヴァロットンです。ヴァロットンって「名前は知ってるな~」くらいの認識でいたんですけど、彼の木版画すごい。ロートレックは多色刷りのリトグラフなのでカラフルな色彩なのですが、ヴァロットンは白黒の木版で、その2色でパキッと陰影をつけてて無駄がなくて、でもどことなく絵本のようなかわいさがあって、私はとても好きです。

 

今回の展示に出ていた≪可愛い天使たち≫1894 は絵本のようなかわいさがずば抜けてた作品です

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パリの絵本で子供が沢山いる、というと私は児童文学の「マドレーヌ」シリーズを思い出すのですが、ちょっと雰囲気似てません?

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あとこれは全然地域も時代も違うんですけど、タンタンの冒険とかも近い感じしますよね。

木版画ではありますが、ヴァロットンの作品はイラストレーションの側面が強いような気がします。

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↑《愛書家》1911 蔵書票にしたい……

 

ロートレックのように吹きつけの技法を多用すると多少の誤差は生まれるはずなんですが、ポスターは版があれば何枚でも同じものが刷れるもので、芸術的価値は低い位置づけなのかと思っていました。しかし、ポスターが流行った当初から、画家とポスターアーティストの境目は曖昧で、わざわざポスターを見るために立ち止まる男女の絵があるくらいにはポスターは芸術として認められていたことを認識した展覧会でした。

現代の私からみても、こんな素敵なポスターが街中にあったら目を留めるだろうなというものが多く、写真ではなく絵であるという目に入ってくる情報の簡素さはとても心地よかったです。

街中にこういうシンプルで目を引くポスターがもっと増えても良いかもしれない。

行った美術展まとめ 2017/11/8

 

全然更新してないので、とりあえず忘れないために行った展覧会一覧にしとく

あとで更新し次第リンク化できたら…いいな…

 

ミュシャ国立新美術館

大エルミタージュ展 森アーツセンターギャラリー

バベルの塔東京都美術館

ファションとアート 麗しき東西交流 横浜美術館

吉田博展 損保ジャパン日本興亜美術館

ジャコメッティ国立新美術館

アルチンボルド国立西洋美術館

ベルギー奇想の系譜 Bunkamura ザ・ミュージアム

 

以上(2017/11/8現在)

草間彌生 わが永遠の魂 【5/22迄】

 

最初にタイトル打ったら変換ミスって「わが永遠の多摩市」になったのは内緒

草間彌生がめちゃめちゃ好き!ラヴ!っていう人間ではないのですが、ここまで大きな館で草間の生きてるうちに「個展」が開かれることはもうないだろうと踏んでいきました。平日なのにミュージアムショップのレジは30分まちでした。覚悟なされよ。

 

草間彌生 わが永遠の魂 @国立新美術館 ~5/22

 

まず入ると、いつかのTV番組の企画で「草間作品を版画にする」で見た、富士山の作品が出迎えてくれ、草間の挨拶の文がある。

でも、その時点で次の部屋に待ち構えている壁一面の連作「わが永遠の魂」と花のオブジェがなんともいえない高揚感を誘う。

待ちきれずに広い部屋に飛び出すと、原色ギラギラの草間ワールド。ここは撮影OKゾーンなので皆写真を撮ってる。

写真を撮ってる若い子はSNSに上げるのか、キラキラした笑顔で花のオブジェと自撮りしている。

以下私の撮った写真


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原色ギラギラで私はもうここで若干酔いというか、そういうのを感じてしまいました。

次の部屋からは、草間の半生、女学生時代、ニューヨーク時代とたどることになります。

 

草間作品に沢山突起のついた椅子というのがあるのですが、隣で作品をみていた若い女性が「これ座ってみた―い」と言っていて

私はどぎまぎしました。草間作品で突起は男根の象徴だからです。

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若い女性は気を付けて!

 

草間は幼少期から幻覚に悩まされ、それの自己治癒や逃避の一環から絵を描いていました。

草間は現在88歳です。一枚の絵に何億という値がついても、彼女は精神病棟の一室で暮らしています。

 そんな彼女は生きてるこの80数年、死の影に怯えつづけ、いつお迎えがきてもおかしくない年齢になってなお、死に怯え、生に執着しています。

「わが永遠の魂」という題名の通り、彼女は絵画によって過去の権力者が追い求めた「不死」を追い求めています。

 

彼女の作品をずーっと眺めているとドキドキしてきて頭がフワフワして、そういう高揚感やエクスタシーにも似た感覚に陥ります

そういうのが一種のトランス状態として、そして臨死体験として、草間作品に信者にも近いファンがおり、

そういう状態に絵画一枚でさせるところが草間がアーティストとして評価される由縁なのかと思います。

 

展示室から出てきて、水玉から解放された私は陽のまぶしさを感じました。彼女はずっと精神病からあの水玉の世界に閉じ込められてるのかと思うと言葉もありません。

 

 

ミュージアムショップのレジは平日でも30分は並ぶ上に、展示室の外でも参加型作品をやっているので忘れずにどうぞ!

ティツィアーノとヴェネツィア派展【2017/4/2迄】

 

去る3月11日、ティツィアーノヴェネツィア派展に行ってきました。

とても穏やかに晴れて暖かかくて、風が強くて…

私は花粉症ではないのですが、それでも上野公園では口の中がじゃりじゃりするなぁと思いました。

 

ティツィアーノヴェネツィア派展@東京都美術館~4/2迄

まず入ると≪統領フランチェスコ・フォスカリの肖像≫が出迎えてくれます。

照明が、スポットライトみたいに説明と絵に当たっていて、いきなりぐっと展示に引き込まれます。

当時のヴェネツィアの鳥瞰図の海に、怪物や神がいるの好きなんですよね。というか、世界地図の絵に○○大陸の擬人像とか、怪物なんかが描かれてるの好きです。ああいうの研究してたら楽しいんだろうなぁ。

 

第1章は聖母子と聖母子と聖母子で、いろんな顔のマリアと幼子イエスが見られました。こんなに聖母子並んでることなかなかないので、逆に一覧で見られて楽しいです。幼子イエスは、聖母子像のときって、基本的に裸か、薄布にくるまれてると思うのですが、

バルトロメオ・ヴィヴァリーニの≪聖母子≫の幼子イエスはきっちり着飾って、マリアに支えられてるとはいえ、ちゃんと二本脚で立ってるのが気になりました。なかなか服着た幼子イエスってみないし…でも、世界の救世主ならこうやって立っててくれたほうが頼もしいような…?

 

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バルトロメオ・ヴィヴァリーニの≪聖母子≫1465頃  コッレール美術館、ヴェネツィア

それにしても顔色が悪いな

 

ティツィアーノは、やはり同時代の画家にくらべると、とびぬけて、抜群に上手いです。

≪復活のキリスト≫の背景の空が本当に好きで。湿っぽくて暖かい風が吹き抜ける海街の荒れた天候がちぎれた雲と青空で表されているのですが、雲にピンクを使って影を付けるのがうまいなーと。

≪フローラ≫は、つついたら柔らかく弾力のありそうな肌に、いい匂いのしそうな服と髪で、女神とはいえど、この絵に邪な気持ちを抱いた殿方は数多くいたんだろうなーと容易に予想がつきました。左胸元、髪の毛先の下あたりに、何度見ても青い血管が見えるような気がする。これは血管が描かれているのか、毛先がそう見えるのか、ティツィアーノがうますぎて血管を錯覚してるのかわかんなかったです。

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ティツィアーノ・ヴェチェッリオ ≪フローラ≫ 1515頃 ウフィツィ美術館フィレンツェ

 

フローラ含め、第2章は人物画、とくに肖像画ばかりですが、セバスティアーノ・フロジェリオ(帰属)の≪蒐集家の肖像≫は曲がった灰色の単調な壁(?)から青空がちらりと見えるのが、なんというか、マグリットとかを想起させます。

 

第三章の「ティツィアーノ、ティントレット、ヴェロネーゼー巨匠たちの競合」ってタイトル、バトル漫画で四天王揃うみたいな感じでめっちゃアツいです。この章でのティツィアーノの作品は≪マグダラのマリア≫。うるうるな目のハイライトが大きめで、なんというか萌え絵の波動を感じます。きらきらうるうるな目が男性の好みというのは、古今東西変わらないことなのでしょうか?乱れた衣服もなんとも言えない妖艶さがあり、さっきのフローラは自分の美しさに自覚的な感じなのに対し、マグダラのマリアのグラビア写真感…。

 

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ティツィアーノ・ヴェチェッリオ≪マグダラのマリア≫ 1547頃 カポディモンテ美術館、ナポリ

ティツィアーノとタイトルのついてる展覧会で申し訳ないのですが、今回の展示で一番好きだったのはヤコポ・ティントレットの≪ディアナとエンディミオン(もしくはウェヌスとアドニス)≫です。

繊細な刺繍のほどこされた大きなクッションに横たわる女神の豊かな身体、綺麗に結い上げられた髪、柔らかそうな布、楽しげなクピド、花咲いた枝、優しげな男性の伏した目

多幸感にあふれていて、とても好きです。ティントレットは≪スザンナの水浴≫がいっとう好きなのですが、あのスザンナも綺麗に結い上げられた髪してました。私が生まれつきのブロンドだったら、ルネサンスなヘアアレンジ沢山するのにな…。

 

今回の展覧会で嬉しかったのはこれ!

 

こういうの作ってくれると、どの本読めばもっと深く知れるのかわかってありがたいですね。

学芸員さんには負担だろうけど、頑張ってくれるととてもうれしい…

 

フィレンツェルネサンス好きの私ですが、ヴェネツィア派も俄然気になってきました。

 

※画像すべてWeb Gallery of Artより

www.wga.hu

 

 

 

クラーナハ展【2017/1/15迄】

あけましておめでとうございます。

新年は3日に西美のクラーナハ展へ行きました。それにしてもせっかく建物が世界遺産になるのに、ドイツ版画にクラーナハと、あんまり華美じゃない展覧会が続きますね。クラーナハは好きなので、初の回顧展嬉しいのですが、美術館の経営がちょっと不安……

クラーナハ展@国立西洋美術館 ~1/15迄

三賀日だったので混んでるかなーと思って朝イチで行きました。なのでとってもすいていて、あっちこっち見ても大丈夫でした。

チケットもぎってもらって、ロビーのところに≪ユディト≫の顔はめパネルがあってですね…ユディトの顔とホロフェルネスの生首のところに顔がはめられるようになってて笑っちゃいました。

 

今回のクラーナハ展は、英題がLucas Cranach The Elderとなってます。日本語のキャプションだと「ルーカス・クラーナハ(父)」となってるやつです。クラーナハの同姓同名の息子も画家だったのですが、今回は題の通り、父クラーナハの展覧会です。

今回の展覧会でクラーナハは妖艶な美女を描いた画家、というより優秀な経営者としての側面が強く出ていたと思います。宮廷画家になり、工房を持ち…。時代も、宗教改革の真っただ中でカトリック側からもプロテスタント側からも仕事を受けてるあたり、すごく世渡りの上手な人だったんだろうなと。普通、競合他社の依頼は受けませんよねぇ。受けてもバッシングとかにあいますし。

クラーナハは1504年にザクセンの宮廷画家となります。クラーナハ30歳前半のことです。めっちゃ早咲きですよね…30そこそこで宮廷画家。宮廷画家となり、成功を着実に収めていくクラーナハは、肖像画家として多くの当時の著名人を描いています。第2章のゾーンはクラーナハ肖像画が多数展示してあります。

私のクラーナハの一番好きなところは、衣装装飾なのですが、もうこの頃から細密に書き込まれていて、ドレスやジュエリーが遠目から見ると本物っぽい。後期の美女画にはその技術が凝縮していて素晴らしいです。この肖像画のゾーンでひときわ目を引く≪ザクセン選帝侯アウグスト≫と≪アンナ・フォン・デーネマルク≫は対になった肖像画ですが、これはクラーナハ(子)の作品です。息子の作品もすごい細密描写で、ドレスの裾の金糸の刺繍とか、近づいてじっくり見ないと絵の具だとは思えないです。

(子)の絵と(父)の絵、ほんと見分けつかないです。(父)の立ち上げた工房でその後継者としてそのスタイルを引き継ぐのですから当然ですが。クラーナハ(父)はヴィッテンベルクに工房を立ち上げ、そこで一つのチームとして作品を生み出していきます。工房体制はルネサンス期からありましたし、日本でも親方について名前を継ぐ系だと思うと、別段珍しいことではないのですが、クラーナハ工房の最大の利点は「すばやい」だったそうです。クラーナハは三代の選帝侯に仕えており、実績もあってめっちゃ仕事が速いとなれば、そりゃ人気も出ますよね。

 

ここまではクラーナハの経歴が重視だったのですが、第4章からお待ちかねの裸体が始まります。私、ずっとクラーナハの裸体で気になっていることがあるのですが、クラーナハの裸体って、お腹がぽっこりしてる気がするんです。

f:id:thethreegraces25:20170106185901j:plainなんというか、骨は意図的に歪ませているとはいえ、この下腹部気になりません?私の推論としては、栄養失調っていうのが思いつくんですけど、宗教改革当時のドイツの栄養状態とか、あと人体とか医学に詳しい人いたらご教授ください。

 

クラーナハの裸体図のアンバランスさって、上記したように骨格が歪んでるのもそうなんですけど、対比が明確すぎるっていうのもあると思います。裸体なのにアクセサリーやヘアはじゃらじゃらっていう対比と、肌の白と背景の黒の対比。動きのある身体と無表情気味な顔。対比があんまりにも明確なので、両極端が気になっちゃうんだと思います。

私はクラーナハの表情が凄く好きです。口元笑ってるのに目が笑ってない。ユディトとか実物みるとドキドキしますね。殺人をしたにもかかわらず(いくら戦争という後ろ盾があるとはいえ)それを悪びれないどころか、満足した顔。ちょっとでもこちらが文句でも言おうものなら、あんたもこの首みたいになるけど?っていう顔。ああいう表情で相手を黙らせられる女性は強いと思います。目力ってやつですね。

それにしても、クラーナハの描く衣装装飾は本当に好きです。ビロードの手触りや光の反射がこちらまで伝わってきそう。それにあのワインレッドといいモスグリーンといい、絶妙な色合い。重たい素材のドレスに呼応するような、大振りのネックレス。最高ですね。そしてさらにびっしりと施された刺繍の数々…。でも全体的に思いファッションでもバランスがとれてるのは、真っ白な肌のおかげだと思います。

そんなクラーナハなので模写するのは大変です。クラーナハをトリビュートする作品も多く出ていた。現代アートからピカソまで。クラーナハの絵は一度見たら忘れられない。ザクセン選帝侯にはじまり、クラーナハの作品は人の心をがっちりつかむ視線を持っている。

 

ミュージアムショップでは、図録買いました。クラーナハの参考資料ってめっちゃ少なくてな……wikipediaですらあんな感じだし…Amazonで検索かけても複製画ばっかり出てきて…。その点この図録は最高です。お正月に行ったのでB3ポスターつけてもらっちゃった!シュタイフのユディトベアはかわいかったけど三万するので見るだけでした。

マリメッコ展【2017/2/12迄】

マリメッコ展@Bunkamuraザ・ミュージアム ~2/12

 

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渋谷のbunkamuraで開催中のマリメッコ展、行きました。26日で、クリスマス後でもう年末に向けてあわただしい時期に行ったせいか、かなり空いていました。

私も世間の女性の大多数の例に漏れず、マリメッコ大好きです。

前に枕カバーをマリメッコの布で作ったことがあります。カラフルなウニッコのファブリックが好きで、その布で作りました。

今年の夏にフィンランドに行ったときも、もちろんマリメッコに行きました。日本人のスタッフさんがいてびっくりしたのを覚えています。

 

マリメッコ展は三章仕立てで、最初がマリメッコの簡単な紹介、そこから各デザイナーの業績、そして今マリメッコは会社としてどんなことをやっているか、という流れで紹介されていました。

 

マリメッコの創業は1951年。デザイナーのヴオッコさんのインタビューでも、「戦争があって女性は解放された、とにかく前のままではいられなかった」という旨のことが話されています。「モードとインテリアの20世紀」でも戦争はひとつのファッションの転換期でした。その転換期にマリメッコは創設されます。創業者は女性です。彼女の手腕は目を見張るものがあります。

マリメッコのロゴ候補のスケッチが展示されていたのですが、とってもかわいいのに、創業者のラティアさんはそれらを全部ボツにして、タイプライターのフォントを採用しています。マリメッコは装飾的でなく、どちらかといえば構築的なラインの服が多いです。その企業としての考えをブランドロゴが示すと思いますが、それを、シンプルで、誰にでも読める、タイプライターのフォントにしたのは、ラティアさんがマリメッコをどのように考えていたかを示す証拠だと思いました。

マリメッコ創成期の有名デザイナーは皆女性です。マリメッコの看板モチーフであるウニッコのデザイナー、マイヤ・イソラさん、マリメッコ初の正社員デザイナー、ヴオッコ・ヌルメスニエミさん……等々のデザインしたファブリックやドレスが展示されています。それらはどれも、フィンランドの自然と近いのにどこか機械的で、上手く表現できないのですが、きっとこれらの服を見た女性は「新しい時代」を感じたと思えるものばかりです。今でこそレトロモダンと言えるドレスですが、これをその当時見てたらセンセーショナルだったんだろうなぁと思いますし、今でもかわいい。その普遍性はマリメッコの強みだと思います。

 

マリメッコ初の外国人デザイナーは日本人男性です。脇阪克二さんという人です。脇阪さんの図案は、なんというか、絵本のようです。図案のための水彩画が展示されているのですが、カラフルで力強い筆使いで、ウニッコやセイレーニのような平面的な感じではないです。私は彼の図案は「マリメッコ的」ではないと感じました。それがもしかしたら、彼の図案が当時のマリメッコファンにウケたのかもしれません。とくに後期になればなるほど、彼の図案も色使いも日本的になっていきます。

 

同じく日本人のデザイナーがもう一人います。石本藤雄さんです。彼は今でもフィンランドで陶芸を中心に活動しているみたいです。私は彼のファブリックすごく好きです。≪マイセマ≫というファブリックが石本さんのインタビュー映像の横に大きくかかっていました。インタビュー映像のなかで、この≪マイセマ≫が石本さんの家の窓にスクリーンカーテンとしてかかっていて、太陽の光が布を通してパステルカラーになっててすごくかわいかったです。私もやりたい。

インタビューの中で彼は自分のデザインしたファブリックに囲まれています。ソファもクッションも。今までの展示は布が壁に掛けられてて、ドレスがトルソ―に着せられててでした。でも、このインタビュー映像の中の家具のように、日常の中に溶け込んで、使われて、でもアクセントになるっていうのが、マリメッコの布の魅力だと思います。

 

マリメッコは愛されています。東京のマリメッコ直営店にも、ヘルシンキの本店も、人が絶えることはありません。それは上記の「普遍的である」ことと、「日常に溶け込むのにアクセントになる」ことが最大の要因だと思います。いつ何時、どんな格好で持っててもかわいいなんて、最高だと思います。ファッションだけにとどまらず、家具や食器もその心意気が詰まってる。きっとマリメッコはこれからもずっと愛されるブランドだと思います。

 

やっぱりマリメッコは赤がきれいですね。ピンクな赤や真っ赤や。赤のバリエーションが豊富でとても刺激的です。ひとつの図案をうまくかみ合わせることで柄の抑揚をつけてるのが上手いです。一つの柄から作られてるとは思えないドレスばかり。

欲を言うとすると、ミュージアムショップにはウニッコ柄のアイテムばっかりだったので、せっかく紹介されてるんだから、日本人のデザイナーさんの図案のやつとか、他の図案の商品も置いてあったらよかったなーー。あと図録がかわいい。ウニッコの柄で表紙がつやつやマットでさらさらしてて、仕舞うのもったいない。飾りたい!

 

モードとインテリアの20世紀 【会期終了済】

 

Twitterに感想を書くと長い上にTL埋め芸人で迷惑になるので、展覧会感想はこちらにまとめることにしました!

 

モードとインテリアの20世紀@パナソニック汐留ミュージアム  ~11/23

 

実はパナ汐行くのは初めてだったのですが、1人でパナソニックショールームを通過しなきゃいけないのはつらかったですね……家買う/リフォームする甲斐性もなさそうな若い女がひとりでショールームっていう……

 

それはおいといて、そのパナソニックショールームの4階がミュージアムです。

三菱一号館オートクチュール展の時も思ったけど、客層がめっちゃマダムなんだなぁ……オートクチュール展のときは若い女の子も見たけど、今回はいませんでした。

 

会場内は割と暗くてせまい。作品リストに書き込みしてたら、スタッフさんがバインダー貸してくれてありがたかった。バインダーの貸し出しいいね、他の展覧会でもやってほしい。絵画の破損とかリスクでかそうだけど。小さいミュージアムだからできることなのかも?

 

展覧会の構成は明瞭で1900-1960年代までのファッションを4つのチャプターに分けて展示するというものでした。

1900-1919までがチャプター1、WW1前までで、いわゆるベルエポック。いままでのコルセットを使ったドレスから解放され、ファッションメディア(ファッション雑誌)が出てくる。展示されているドレスやファッション誌の図案に東洋趣味が出ているのが興味深かった。着物風のドレスや、イラストの背景に盆栽らしきものがあったり。全然東洋と西洋でミスマッチなはずなのに、それが逆に新鮮。

 

チャプター2は1920-1939。WW2まで。WW1終戦後のつかの間の平和は「狂乱の時代」を生み出すが、世界恐慌でまた逆戻り。ここで面白いのは、スカート丈の長さ。よく、「女性のスカート丈が景気を表す」なんて言うけど、この時代でも、世界恐慌前後でだいぶスカート丈が違う。恐慌後は長くなってる。それでも1938年のマドレーヌ・ヴィオネのイヴニングドレスは背中があいてるし(背中が開いたものが流行したらしい)、1936年のジャンヌ・ランヴァンの黒いドレスは、流れるような胸元から裾までの細身のドレスに、白いアップリケのボリュームスリーブで惚れ惚れするほど美しい。ボリュームスリーブ流行ってるし、普通に着たい。

 

1940-1959がチャプター3。ここは撮影OKゾーンがあった。WW2中はオートクチュールの本場パリが戦地となったために、既製服が発達していたアメリカやイギリスがモード発信地に。でもやっぱり見ていて楽しいのはWW2終結後の復活したメゾンのもの。とくに1953年のクリスチャン・ディオールのディナードレス「カラカス」はめっちゃ可愛かった……パフスリーブにウェストマークからのボリュームスカートが全てシフォン素材でおまけに真っ赤なバラのプリント……しかも裾はアシンメトリー!言うことなし!さすがディオール!!感動した……!同じ年代のディオールのスーツも出てたんだけど、とても女性的で、ラインが繊細。三菱一号館オートクチュール展では、シャネルのスーツが出てたのだけど、シャネルは「ハンサム」って感じだった。同じスーツでもメゾンのカラー出るな〜って感じ。

 

チャプター4は1960s。チャプター入ってすぐに森英恵の明るいピンクの着物風ホステスガウンがバーンってあって、森英恵すごい……これは確かに日本人が衝撃受けるんだから、西洋人には革命だろうな……ってなった。ジャポニスムというか、そういう〇〇趣味、っていう「完全に理解してないひとが違う文化への憧れだけで作成したもの」は数あれど、生粋の日本人が「西洋人の憧れ」であるものをオートクチュールに組み込んでしまう凄さ……革命だよ……。あとクレージュのビタミンオレンジのミニワンピース。かわいかったなー!素材がビニール製エナメルで、ミノルタ製カメラが小物で付いてるの。capsuleの「プラスチックガール」みたいなレトロフューチャーなかわいさが好きだから、このクレージュはたまらなかった。

 

番外編で3と4の間にスイムウェアとかテニスウェアとかあるんだけど、そこは割愛しました。

 

全体的に、ファッションというのは時代の影響を直に受けやすく、「戦争でいない男性の代りに女性の社会進出がすすむ」ということが、いかに女性のファッションの自由度を上げていたかが、歴史というストーリー制を持って展示されてて、とても見やすく、女性は強いな!って元気になる展覧会でした。

 


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